美樹さやか
「あっ...」

看護師A
「あら、上条くんのお見舞い?」

美樹さやか
「え、ええ。」

看護師A
「ごめんなさいね、診察の予定が繰り上がって、今ちょうどリハビリ室なの」

美樹さやか
「あ、そうでしたか、どうも」

看護師B
「よく来てくれるわよね、あの子」

看護師A
「助かるわ。  難しい患者さんだしね。
励ましになってくれてると良いんだけど」

看護師B
「事故に遭う前は、天才少年だったんでしょ?
バイオリンの」

看護師A
「歩けるようになったとしても、指の方はね。
もう二度と楽器を弾くなんて、無理でしょうね」

美樹さやか
「何で、恭介なのよ。
私の指なんて、いくら動いてたって、何の役にも立たないのに。
何で私じゃなくて、恭介なの。  もしも私の願い事で恭介の体が治ったとして、それを恭介はどう思うの?
ありがとうって言われて、それだけ?
それとも、それ以上のことを言って欲しいの?
私って、嫌な子だ」

思えばその時の私は、まだ何もわかっていなかった。
奇跡を望む意味も、その代償も。

――OP――
鹿目詢子
「おおー、ホクロか?取れた」

鹿目詢子
「まどかー、おーさっさと食べないと遅刻だぞ」

鹿目まどか
「う、うん」

鹿目詢子・鹿目知久
「ん?」

鹿目タツヤ
「姉ちゃんどったの?」

鹿目知久
「ま、不味かったかな?」

鹿目まどか
「んーん。
美味しいの。
すごく美味しい。
生きてると、パパのご飯がこんなに美味しい」

美樹さやか
「でもって、ゆうかったらさあ!
それだけ言ってもまだ気付かないのよー。
”え、何ー?私また変な事言った~!?”っとか半べそになっちゃってー。
こっちはもう笑いこらえるのに必死でさー」

鹿目まどか
さやかちゃん、昨日のこと…

美樹さやか
ごめん、今は止めよう?
また後で
「もうそうだよねー!
どうかと思うよねー!」

志筑仁美
「流石にそこまでは」

早乙女和子
「えー確かに、出産適齢期というのは、医学的根拠に基づくものですが、そこからの逆算で婚期を見積もることは大きな間違いなんですね!
つまり、30歳を超えた女性にも恋愛結婚のチャンスがあるのは当然のことですから、したがってここは、過去完了形ではなく現在進行形を使うのが正解...」

キュゥべえ
「ん?」

鹿目まどか
「なんか違う国に来ちゃったみたいだね。
学校も仁美ちゃんも、昨日までと全然変わってないはずなのに、何だかまるで知らない人たちの中に居るみたい」

美樹さやか
「知らないんだよ、誰も。
魔女のこと。
マミさんのこと。
私達は知ってて、他の皆は何も知らない。
それってもう、違う世界で違うものを見て暮らしているようなもんじゃない」

鹿目まどか
「さやかちゃん…」

美樹さやか
「とっくの昔に変わっちゃってたんだ。
もっと早くに気付くべきだったんだよ、私達も」

鹿目まどか
「…」

美樹さやか
「まどかはさあ。
今でもまだ魔法少女に成りたいって思ってる?」

鹿目まどか
「…」

美樹さやか
「そうだよね、うん、仕方ないよ」

鹿目まどか
「ずるいってわかってるの。
今更虫が良すぎだよね。
でも、無理!私、あんな死に方…。
今思い出しただけで、息ができなくなっちゃうの。
恐いよ!嫌だよ」

美樹さやか
「マミさん… 本当に優しい人だったんだ。
戦うためにどういう覚悟がいるのか、私達に思い知らせるために、あの人は...!」

美樹さやか
「ねえキュウべえ。
この街どうなっちゃうのかな?
マミさんの代わりに、これから誰が皆を魔女から守ってくれるんだろう」

キュゥべえ
「長らくここはマミのテリトリーだったけど、空席になれば他の魔法少女が黙ってないよ。
すぐにも他の子が魔女狩りのためにやってくる」

美樹さやか
「でもそれって、グリーフシードだけが目当てのやつなんでしょ?
あの転校生みたいに」

キュゥべえ
「確かにマミみたいなタイプは珍しかった。
普通はちゃんと損得を考えるよ。
誰だって報酬は欲しいさ」

美樹さやか
「じゃあ...」

キュゥべえ
「でも、それを非難できるとしたら、それは同じ魔法少女としての運命を背負った子だけじゃないかな」

キュゥべえ 
「君達の気持ちはわかった。
残念だけど、僕だって無理強いはできない。
お別れだね。
僕はまた、僕との契約を必要としている子を探しに行かないと」

鹿目まどか
「ごめんね、キュウべえ」

キュゥべえ
「こっちこそ、巻き込んで済まなかった。
短い間だったけど、ありがとう。
一緒に居て楽しかったよ、まどか」

鹿目まどか
ごめんね

鹿目まどか
ごめんなさい、私、弱い子で...!
ごめんなさい...!!

鹿目まどか
「ほむらちゃん...」

暁美ほむら
「あなたは自分を責めすぎているわ、鹿目まどか」

鹿目まどか
「え…」

暁美ほむら
「あなたを非難できるものなんて、誰もいない。
いたら、私が許さない!」

暁美ほむら
「忠告、聞き入れてくれたのね」

鹿目まどか
「うん」

鹿目まどか
「私がもっと早くにほむらちゃんの言うこと聞いてたら...」

暁美ほむら 「それで巴マミの運命が変わったわけじゃないわ」

鹿目まどか
「…」

暁美ほむら
「でも、あなたの運命は変えられた。
一人が救われただけでも、私は嬉しい」

鹿目まどか
「ほ、ほむらちゃんはさ、何だかマミさんとは別の意味でベテランって感じだよね」

暁美ほむら
「そうかもね。否定はしない」

鹿目まどか
「昨日みたいに、誰かが死ぬとこ何度も見てきたの...?」

暁美ほむら
「そうよ」

鹿目まどか
「何人くらい...?」

暁美ほむら
「数えるのを諦めるほどに」

鹿目まどか
「あの部屋、ずっとあのままなのかな」

暁美ほむら
「巴マミには遠い親戚しか身寄りがいないわ。
失踪届けが出るのは、まだ当分先でしょうね」

鹿目まどか
「誰もマミさんが死んだこと、気付かないの?」

暁美ほむら
「仕方ないわ。
向こう側で死ねば、死体だって残らない。
こちらの世界では彼女は永遠に行方不明者のまま。
魔法少女の最後なんて、そういうものよ」

鹿目まどか
「酷いよ…。
皆のためにずっと独りぼっちで戦ってきた人なのに、誰にも気付いてもらえないなんて、そんなの寂し過ぎるよ」

暁美ほむら
「そういう契約で、私たちはこの力を手に入れたの。
誰のためでもない、自分自身の祈りのために、戦い続けるのよ。
誰にも気付かれなくても忘れ去られても、それは仕方のないことだわ」

鹿目まどか
「私は覚えてる...!
マミさんのこと忘れない!
絶対に!!」

暁美ほむら
「そう。
そう言ってもらえるだけ、巴マミは幸せよ。
羨ましいほどだわ」

鹿目まどか
「ほむらちゃんだって。
ほむらちゃんのことだって、私は忘れないもん!
昨日助けてくれたこと、絶対忘れたりしないもん!」

鹿目まどか
「ほむらちゃん...?」

暁美ほむら
「あなたは優しすぎる。
忘れないで。
その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」

美樹さやか
「何を聞いてるの?」

上条 恭介
「亜麻色の髪の乙女」

美樹さやか
「ああ、Debussy?
素敵な曲だよね」

美樹さやか
「あ、あたしってほら、こんなだからさ、クラシックなんて聞く柄じゃないだろって皆が思うみたいでさあ。
たまに曲名とか言い当てたらすごい驚かれるんだよね。
意外過ぎて尊敬されたりしてさ」

美樹さやか
「恭介が教えてくれたから、でなきゃ私、こういう音楽ちゃんと聞こうと思うきっかけなんて多分一生なかっただろうし」

上条 恭介
「さやかはさぁ…」

美樹さやか
「なに?」

上条 恭介
「さやかは僕を苛めてるのかい?」

美樹さやか
「え…?」

上条 恭介
「何で今でもまだ僕に音楽なんか聴かせるんだ?
嫌がらせのつもりなのか?」

美樹さやか
「…!
だって恭介、音楽好きだから」

上条 恭介
「もう聞きたくなんかないんだよ!
自分で弾けもしない曲、ただ聞いてるだけなんて!
僕は、僕は...!」

上条 恭介
「動かないんだ、もう。
痛みさえ感じない。
こんな手なんて...!」

美樹さやか
「大丈夫だよ、きっとなんとかなるよ。
諦めなければ、きっといつか...!」

上条 恭介
「諦めろって言われたのさ。
もう演奏は諦めろってさ。
先生から直々に言われたよ。
今の医学じゃ無理だって。
僕の手はもう二度と動かない。
奇跡か魔法でも無い限り治らない...!」

美樹さやか
「あるよ」

上条 恭介
「えっ」

美樹さやか
「奇跡も魔法もあるんだよ!」

鹿目まどか
ほむらちゃん、ちゃんと話せばお友達になれそうなのに。
どうしてマミさんとは喧嘩になっちゃったのかな...。
あれ?仁美ちゃん?
「仁美ちゃーん!
今日はお稽古事は」
あれ、あの時の人と同じ!
「仁美ちゃん!
ねぇ!仁美ちゃんってば!」

志筑仁美
「あら、鹿目さん、ご機嫌よう」

鹿目まどか
「ど、どうしちゃったの?
ねえ、どこ行こうとしてたの?」

志筑仁美
「どこってそれは、ここよりもずっと良い場所、ですわ」

鹿目まどか
「仁美ちゃん...」

志筑仁美
「ああそうだ、鹿目さんも是非ご一緒に。
ええそうですわ、それが素晴らしいですわ」

鹿目まどか
どうしよう、これってまさか...!
ほむらちゃんに連絡できたら...!
あー駄目だ、携帯の番号わかんない!

男 
「そうだよ、俺ぁは駄目なんだ。
こんな小さな工場の一つ、満足に切り盛りできなかった。
今みたいな時代にさあ、俺の居場所なんて有るわけねえんだよなぁ」

鹿目詢子
「いいか、まどか。
この手の物には扱いを間違えるととんでもないことになる物もある。
あたしら家族全員あの世行きだ。
絶対に間違えんなよ?」

鹿目まどか
「駄目。  それは駄目!」

志筑仁美
「邪魔をしてはいけません。
あれは神聖な儀式ですのよ」

鹿目まどか
「だって、あれ危ないんだよ!
ここに居る人達皆死んじゃうよ!」

志筑仁美
「そう、私達はこれから皆で素晴らしい世界へ旅に出ますの。
それがどんなに素敵なことか、わかりませんか?
生きてる体なんて邪魔なだけですわ。
鹿目さん、あなたもすぐにわかりますから」

鹿目まどか
「離して!」

鹿目まどか
「どうしよう、どうしよう!
い、嫌だ、そんな。
嫌だ、助けて、誰か!」

鹿目まどか
罰なのかな、これって。
きっと私が、弱虫で、嘘付きだったから。
バチが、当たっちゃったんだ。
「さやかちゃん!?」

美樹さやか
「これで止めだぁ!」

美樹さやか
「いやー、ごめんごめん。
危機一髪ってとこだったね。」

鹿目まどか
「さやかちゃん...、その格好...」

美樹さやか
「ん、ああ、まあ何、心境の変化って言うのかな。
大丈夫だって。
初めてにしちゃうまくやったでしょ、私」

鹿目まどか
「でも」

暁美ほむら
「あなたは...!!」

美樹さやか
「フン!
遅かったじゃない、転校生!」

キュゥべえ
「まさか、君が来るとはね」

佐倉杏子
「マミの奴がくたばったって聞いたからさあ、わざわざ出向いてやったってのに。
何なのよ!
ちょっと話が違うんじゃない?」

キュゥべえ
「悪いけど、この土地にはもう新しい魔法少女が居るんだ。
ついさっき契約したばかりだけどね」

佐倉杏子
「何それ!
ちょうムカつく!
でもさぁ、こんな絶好の縄張り、みすみすルーキーのひよっこにくれてやるってのも癪だよね」

キュゥべえ
「どうするつもりだい、杏子?」

佐倉杏子
「決まってんじゃん。
要するに、ぶっ潰しちゃえば良いんでしょ、その子?」

――ED――

――次回予告――
美樹さやか 舞い上がっちゃってますねー、私!
これからの見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン守りまくっちゃいますからねー!!

後悔なんてあるわけない